治療費の16条請求とは
1 16条請求
16条請求の16条とは、自動車損害賠償責任保険の制度を定めた法律である「自動車損害賠償保障法」の16条のことです。
自動車損害賠償責任保険は、事故の加害者が賠償金を被害者に支払った場合と、被害者が事故による損害を被った場合の、いずれの場合でも保険金の支払を請求することができます。
加害者が保険金の支払を請求する場合について同法15条が、被害者が保険金の支払をする場合は同法16条が、それぞれ適用となるため、被害者からの保険金の支払請求について16条請求と呼ばれています。
2 被害者による治療費の16条請求
自動車損害賠償責任保険への請求は、治療費の領収書のほかに、所定の診断書(自動車損害賠償責任保険に対する請求のために様式が統一された診断書)と診療報酬明細書が必要となります。
被害者に対する保険金の支払を検討する際、被害者が受診した診療内容が相当の範囲であるか、過剰・不必要な治療行為が含まれていないか、確認するためです。
また、自動車損害賠償責任保険からの慰謝料の支払は、通院日数を基準として算定されるため、通院日の証明も必要となります。
上記の各書類を作成してもらう際、医療機関からは所定の文書料を請求されますが、この費用についても、自動車損害賠償責任保険に対して支払を求めることができます。
3 治療費を16条請求する場合の留意点
上記のとおり、所定の書類作成・費用を要するほかに、以下のような留意すべき事項があります。
⑴ 治療費を実際に支払った後でないと請求できない
実際に支払った後でないと請求できないため、入院など高額な費用を要する場合には、被害者の経済的負担が大きくなります。
⑵ 自動車損害賠償責任保険からの支払に上限がある
自動車損害賠償責任保険からの支払は、ケガに対するものと、死亡・後遺障害に対するものとに分かれ、それぞれ上限額が定められています。
治療費に対する支払は、ケガに対する支払とされ、その上限額は120万円です。
また、120万円の範囲には、治療費だけではなく、休業損害や慰謝料、通院のための交通費なども含まれるため、120万円の枠内では全てをまかなうことができないことがあります。
4 弁護士にご相談を
一般の方が治療費について16条請求をする場合、経済的負担や、申請のための事務的な負担が生じます。
このため、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。